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本誌連載 料理研究家・吉田麻子さんと対談

千野志麻のArt de Vivre Talking

アナウンサーの千野志麻さんが、女性ならではの文化的に豊かな美しい生活について、全国でサロンや教室を主宰する先生と語らう本誌連載。今回の対談相手は、大阪市で料理教室を主宰する吉田麻子さん。日本料理や家庭の味の大切さと、簡単にできる和食のコツについて話し合いました。

吉田さんが持参した和食器。手前の鮮やかな龍が描かれた赤絵の小皿は、親子3代に受け継がれた江戸時代のもの。奥の青い蛸唐草の染付がされた茶碗は古伊万里。骨董品ならではの味わい深さと、磁器の乾いた響きに積み重ねられた時間がうかがえる。

おいしいものが好き!日本の豊かな食文化

千野 和食だと器も気になりますよね。今日お持ちいただいている食器も素敵。
吉田 祖母が母に譲り、私が母から受け継いだ江戸時代のものです。
千野 立派な骨董品ですね。私が通う料理教室の先生が持っていらっしゃるのを見ても憧れるんですが、和食は特に、器をどう活かしたらよいのかわからなくて。
吉田 自分の好きなように使っていいと思いますよ。和食器も最近はモダンなものがたくさんありますし。逆に青い染付の洋食器も和食と相性がいいですから、自由に楽しんでいただきたいですね。
千野 私は今年のお正月にお重を買いました。ひとりに1段分出したいなと思って。自宅に人を招く機会が多いので、応用が利く器や、手間がかからずおいしくいただける料理には関心があります。実は今週末もホームパーティーなんですよ。子供と大人、それぞれにメニューを考えなくちゃ。料理ってもちろん楽しいけれど、肉体労働ですよね。
吉田 そうですね(笑)。私も最初は料理教室に優雅なイメージがあったんですが、体力勝負ですね。でも皆さんが喜んでくれる顔が励みになってます。
千野 今後は教室をどんなふうに展開されていくんですか?
吉田 東京でも教室を開きたいです。東京はおいしいお店がたくさんありますし。こんなにおいしいものがたくさんある都市、世界のどこを探してもほかにないと思いますよ!
千野 いいお店をたくさん知っていらっしゃいそう。子供ができてから外でおいしいものを食べる機会がめっきり減ったんですよ。いいなあ、教えてください!

日本の伝統的な味を伝えていきたい

千野志麻(以下千野) 今は育児でお休み中ですが、私も料理教室に通っているんです。吉田さんはどんな料理を教えられているんですか?
吉田麻子(以下吉田) 大阪で関西風の日本料理を教えています。日本料理って聞くと、難しそうと思いがちですが、身近な素材と道具で作ってもらえるように心掛けています。
正統派の日本料理はもちろんですが、現代風にアレンジした和食、イタリアンやフレンチ、中国料理なんかもお教えしています。
千野 関西には薄味のイメージがあります。作っているとどうしても濃くなってしまうんですよね。外で食べる機会の多い夫に合わせると、体に悪いと思っていながらもついつい味を足してしまいます。
吉田 関西といっても私のいる大阪と京都でも違いがあるんですよ。もともと懐石料理は千利休が大阪で始めたものですが、関西のなかでも京都はやっぱり薄味ですね。
千野 簡単にできる和食のコツ、ぜひ教えていただきたいです。
吉田 例えば煮物だったら、一度火を止めて味を含ませる。柔らかくなるまでぐつぐつ炊いてしまいがちですが、火を止めると素材の色や歯ごたえも損なわれませんし、中まで味がしみ込むので、だしを活かした薄味でも十分おいしくいただけます。
千野  なるほど。でも、だしを取るのもやり方がいろいろありそうで、躊躇してしまいます。今年のひな祭りは、娘のためにちらし寿司と蛤のお吸い物を作ったんですが、だしだけだと不安になってやっぱり味が濃くなってしまいました。
吉田 味見してちょっと薄いなと思うくらいがちょうどいいんです。昆布のだし汁は、ポットの水に昆布を一晩漬けるだけでも十分。それに鰹のパックをプラスしてもよいと思います。そうしたちょっとしたコツで、日本料理をご家庭でも気軽に作っていただきたいんです。各地方それぞれ郷土料理がありますが、日本料理の土台となっている関西の心のこもった、温かい手作りの味を伝えていきたいですね。
千野 私も子供が生まれてから、家庭の味を特に意識するようになりました。静岡の高校を卒業するまでほとんど外食はしなかったと思います。食べること自体が好きなので、上京してからはお店でおいしいものを食べる機会が増えましたが、味覚のベースになっているのは母の手料理だと思います。
吉田 私が料理の道を選んだのも、両親と祖父母の影響が大きいです。食事をとても大切にする人だったので。物足りないと思っていた薄味の高野豆腐なんかも、やっぱり今はおいしいなと思えますね。それにしても、ひな祭りのお料理を作ったり、千野さんもお子さんに対して食事で日本の伝統を伝えていらっしゃるんですね。
千野 私のほかには誰も教えてあげる人がいませんからね。がんばってます(笑)。

PROFILE

千野志麻 Shiho Chino
1977年生まれ。聖心女子大学在学中、日本テレビ「知ってるつもり?!」MCアシスタントとして活躍。卒業後フジテレビに入社、新人時代に司会を務めたトーク番組「チノパン」で注目を集める。2005 年結婚を機に退社、現在フリーで活躍中。趣味は料理、クラシックバレエ、フラワーアレンジメント、ゴルフと幅広い。2008 年6月に双子の男児、2009 年12 月には女児を出産。子育て本『30 代からのしあわせ子育てノート』(アスコム)が好評発売中

PROFILE

吉田麻子 Asako Yoshida
同志社女子大学卒業後、辻調理師専門学校、辻日本料理マスターカレッジを卒業。茶懐石料理、イタリア料理、フランス料理、中国料理、エスニック料理、製菓などを学び、ニューヨーク、サンフランシスコへ料理留学。現在大阪市にて、関西風の日本料理を中心にさまざまな料理を学べる料理教室を主宰している。
吉田麻子料理教室
TEL:06-6646-2178
http://www.asakoyoshida.com

写真:菊池陽一郎
撮影協力:ロイヤルパークホテル「源氏香」